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ブルガーコフ「帰郷」とスターリン

映画 "帰郷" / 1971年 / モスフィルム作品 / 脚色・監督 アーロフ&ナウーモフ

ブルガーコフの『帰郷』『帰郷』はブルガーコフの戯曲のひとつで(執筆は1926-28年)、ずいぶんと以前に読んだので内容もほとんど忘れかけていました。これをたまたまフィルムで見る機会がありました。

『帰郷』は、白軍(皇帝軍)の将軍およびその周辺のひとびとが、ロシア革命のさなかトルコに逃れたのちの姿をえがいています。とつぜん何者でもなくなったひとたちの赤貧の日々、ロシアへのおもい・・・

国内戦がひとまず落ち着くと・・・「帰ってもどうもだいじょうぶそうだぞ」ということで、国外に逃れた白軍側のかなりのひとたちが、じっさいにはロシアに帰郷していたのですね。かれらがことごとく亡命移民になったのではないというのは、ちょっと意外でした。

でも将軍クラスは帰っても確実に殺されたし、帰らなくてものちのち秘密警察に連れ戻されるか国外で抹殺されたみたいです。アドミラル・コルチャック(北極の研究者でもあった)がシベリアで殺されたのがおもいだされます。けっきょく、みずからの命を絶つしかなかったひとたちもいたのでしょう。

ところで、スターリンはブルガーコフを徹底的に嫌っていた、そういうふうに言うひとたちもいます。なぜならレーニン、スターリンはユダヤ系でしたし、ブルガーコフは旧社会階層出身でユダヤ人疎外主義者でした。(『犬の心臓』にでてくるシュヴァンデルなどはユダヤ人の象徴です。また、ブルガーコフが育ったロシア帝政時代には、ユダヤ人は特定の大都市には住んではならないとか、高等教育は受けられないとか、ユダヤ人疎外政策がしかれていました。)

ところが一方で・・・『帰郷』に登場する白軍の将軍たちがもし、社会主義国家の繁栄をたたえ、悔悟して祖国に戻るという幕をブルガーコフがこの戯曲につけ加えたなら、『帰郷』の上演も許可するとスターリンは書き残しています。

そりゃムリじゃろ、とおもうのですが・・・それにしてもスターリンは、マニアックな人間不信である一方、海外にどんどんひとを送り出して欧米の技術を積極的に学ばせたりもしているし、もしかするとブルガーコフを評価していたのではないかとおもえるフシもある・・・フシギなひとです。

(2003.06.21. MOSCOW)

※ ロシア人が愛する画家レヴィタンはユダヤ人でしたが、サヴラーソフの弟子ということで、なかば出自をカモフラージュするかたちで高等教育を受けることができました。チェーホフ、シローフ(画家)、カローヴィン(画家)などの友人たちの力添えがあったことも無視できません。

かんれんファイル

■ ブルガーコフの「帰郷」にふれているファイル
■ 映画「巨匠とマルガリータ」

ユダヤ人かんれんファイル

■ ロシアのユダヤ人
■ ラスプーチンとユダヤ人

BBSより

ブルガーコフの帰郷・・・ヴォーリャさん 2007.06.09.

『帰郷』見てきました。私には、コンスタンチノーポリやパリでの亡命者たちの姿を描いた第二部よりも、国内線を描いた第一部の方が映画として密度が高く感じられました。この映画は公開後一週間しか上映されず、すぐに上映禁止になってしまったそうですね。現在は若い世代に支持されているとか・・・

下のサイトはNEW TIMESで、1926年10月25日の共産党アカデミーでのブルガーコフについての会議録を再現しています。

http://www.newtimes.ru/magazine/issue_14/issue_14.htm

えかきのき 2007.06.15.

ブルガーコフ会議録はちょっとプロパガンダっぽいネ。伏線にユダヤ人問題?そういえばブルガーコフってどんな立場だったけ?・・・・・ブルガーコフはユダヤに好意的な立場ではないのですね。いままでそういう見方でブルガーコフを読んだことなかったけど、「マルガリータと巨匠」「犬の心臓」にしても、いわれてみるとナルホド。じゃスターリンとおともだちじゃん。でもブルガーコフは反体制だよな。

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