EKAKINOKI

モスクワのジャパニーズ・レストラン

モスクワのレストラン・・・だだっ広い空間に成金趣味のインテリア、テーブルの上のバスケットには2、3かけらのパン、料理の量をおもむろにけちる、そのくせ値段ばかりやけに高い、パスタ料理を注文すれば麺の値段とソースの値段をべつにとるバカバカしさ、愛想もプロ意識のかけらもない店員、かとおもえば欧米のレストラン・マニュアルにそって場違いの超笑顔を振りまく店・・・

あんまりいい印象はない。心はずまないどころかしゃくのたねがふえるので、モスクワで外食することはほとんどない。もちろんなかにはたのしい店、プロフェッショナルな店もあるにはちがいない。でも、いき当たりばったりに入って、「ああ良かった」とおもえる店に出会う確率はすごく低いとおもう。

必要にかられて外食するときは、学食形式のメシ屋みたいなのが、おもてからはわかりにくいけれど、ほうぼうにある。そこで供される安くて平均的なメシはあたりはずれがない。あるいは、ボリショイ劇場のそばにある「ヨールキ・パールキ」のようなヴァイキング形式の店はロシア人にもけっこう人気があって、料理も値段もリーズナブルなのでときたま寄る。

もっともロシア全体についていうなら、モスクワ以外の都市や町のレストランはけっこうたのしい。まず、すれてない。地方都市のレストランは、金儲けのためのたんなる手段としてよりなにより、レストランとして機能している。素材が地元のもので新鮮。猟がさかんな国だから、地元のジビエ(野鳥野獣)とかもよく供される。

モスクワでは外食することがほとんどないから、ましてや日本料理屋なんて、怖さが先立って近寄らない。何年も前に寿司レストランのにぎりが1個10ドルとかをみて、「モスクワの日本料理とはなんぞや」が一目でわかった気がした。それでも最近は寿司・さしみなどがロシアで流行ってて、日本料理をリーズナブルな値段で供する店がずいぶんふえたはずだ。ただじっさいに行ったことはないので、どんなものを供するのか、料理の質や満足度は知るよしもない。

それが最近、たまたま、ある日本料理屋に入った。それほど数は多くないがチェーン店化している店のようで(現在6店舗?)、名前は「タヌキ」。店に入るとオリエンタル一色・・・竹や水車の日本調と、中国やら正体不明なオリエンタルがごっちゃまぜのインテリア。だけど全体的に落ち着いていてわるくない。いやむしろ愉快〜

テーブルに着くとキモノ姿のオリエンタルな面立ちのおねえさんがオーダーをとりにくる。完璧なロシア語だけど(ロシア人だからあたりまえ)、どこか日本的で控えめなしゃべり方をするのがおもしろい。そしてお茶がだされる。

車夫みたいなかっこうをしたにいちゃんがテーブルのあいだをうろついていて、はるかかなたから、長さ2メートルぐらいはあるんじゃないかとおもわれるじょうろの先から湯を急須に注ぐ。赤い色をしているのでなんのお茶かとおもったらハイビスカス系だ。ハイビスカスが歯にへばりついたけどおいしかった。もう一杯、といったらお金をとられた。

「タヌキ」というなまえもなまえだし、オリエンタルな店だとあらかじめ知ってて入ったんだけど、あらためてメニューを見て、寿司、スキヤキ、テンプラにはじまり、餃子、焼きそば・・・ともかく完璧な日本のメニューなんでちょっと驚いた。

客層も落ち着いている。「オレはロシア料理が食いたい〜」なんて言い張る野暮なロシア人はここにはいない。ぜんたいにインテリっぽいかんじで、そばには正教会の神父さんが腰掛けていた。時間帯がすこしずれていたせいか、料理を食いにくるというよりは、そういう雰囲気のなかで時間をたのしんでいるふうに見うけられた。

しかしいざ注文となるとあまり信用してないせいか迷う。無難なところで「天丼」にした。水差しかなんかで垂らしたようにタレがかろうじてテンテンテンとかかっているのと、具が小ぶりなのと、大きさがおちゃわんぐらいしかないどんぶりに盛られていて超食べにくいのと(メシ粒もボソボソだからよけい)、、とかはあったけど、天丼は天丼だった。いっしょに行ったロシア人たちは寿司を適当にえらんでめずらしそうに食ってた。タコを食べたことがないので食べてみたいというひともいた。

値段も、ひとりあたま千円もいかない。それでじゅうぶんにたのしめた。またこの店に日本人として日本料理を食べに来ようとはおもわないけれど、でも日本のものをつっつきながらたのしい時間を過ごせるいい店だなぁ、とおもった。合格〜!

(2005.12.28.)

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