EKAKINOKI

正しいワイロの渡し方

ロシアで『ワイロ』は、ポーカーをしているときのジョーカーだ。・・上から下まで、みんなやってる。のらりくらりとした手続きも瞬間サービスに様変わりするし、スピード違反をしたってだいじょうぶ。休暇のための診断書を医師に好きなように書かせることもできれば、子供の成績もグンとあがる。税務署員だって、おはなししーましょ。

法律のホの字さえ知らないにいちゃん警官に、非の打ちどころがないビザやパスポートが偽造だと言われようが、そのほか想像を絶するようなことが日常茶飯事に起きても(ロシアは『奇跡の国』だと当人たちも自嘲しています)、このジョーカーの使い方さえ心得ていればこわいものはありません。

とまあこれはすこしオーバーですが、使う使わないはべつとして、ロシア社会で『ワイロ』という隠し札をもっているのといないのとでは、『心のゆとり』にずいぶんと違いがでてきます。『ワイロ』の使い方を知らないのは、素手でクマに立ち向かうか、じぶんだけジョーカーなしでポーカーをやるか・・みたいなもんです。

日本のように法律が遵守され、社会が潤滑に機能し、懐具合によっては各種サービスを選択できるようなところでは、ふつうのひとが『ワイロ』のことを考えることなどまずありませんが、社会がまともに機能していないところでは、『ワイロ』がある種の潤滑油になって、百のイヤなおもいと膨大な時間と労力のムダ使いをなくしてくれます。

なにをどのくらい渡すかとかは・・『手にした便宜がどのくらいそのひとにとって価値があるか』ということなので、各人が各様に考えればいいことです。

モンダイはむしろ、『どうやって話を切り出すか・・』ではないでしょうか?とくに日本人はそういう経験がないですし・・。まさかまさか・・「お金あげるからはやくやってくんないー?」とか「いくら欲しいの?」なんて・・言うひとはいないとおもいます。ほんとうはそう言いたくても、じっさいにそうは切り出せないものです。

「『ワイロ』が当たり前なんだろう・・みんな慣れてるんだろう・・ならヘンに隠し立てすることないじゃん。」と、『ワイロ』とは縁がない国のひとたちはストレートに考えるかもしれません。「じっさいのはなし、お金もらえば助かるんでしょ?」と、必要以上に現実的な態度をとるひともいるかもしれません。

しかしこれはこれでまた、渡したほうとしてもなんとなく居心地の悪さが残ったりします。じつはここのところに、『正しいワイロの渡し方』の極意があるのです。

「コトをもっと迅速に運ぶ方法はありますか?」
「もしこうしてくれたら、あなたに格別に感謝できるのですが・・。」

『ワイロ』が潤滑油になっている社会では、『暗示する』だけで、十分なのです。相手もニンゲンです。ふつうのニンゲンの心理と、もちろんプライドだってあります。

「つまらないものですが・・」と言われるよりは「あなただけに特別に・・」と言われたほうが自尊心をくすぐられますし(マジで・・)、おなじチョコレートを差し出すのでも、人目を引くような素敵な包装がしてあれば、女医さんの相好もおもわず崩れて、2日の診断書が一週間になることだってあるのです!

(2002.12.18.)

※ 写真はパン屋さん風景・・ここでとくに賄賂がきくわけじゃないけど。

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