EKAKINOKI

イクラ缶とロシアの通貨政策

russia economics戦後の日本では『1ドル=360円』。もしこれを「『1ドル=80円』じゃなきゃヤダ!」としていたらどうなったでしょうか?

なんと1998年夏まで、ロシアはそうしていました(!)。ドルが安く手に入るのですから、ロシアでお金をもうけて、ドルにかえてスイスに送ったり、ニューヨークとかにマンションをどんどん買ってしまえばいい。日常品にしたって輸入したほうが安いわけですから、自国産業はいつまでたっても育ちません。

そういう状態がしばらく続いていました。当然外国人にとって、ロシアの物価はそれほど安いものではありませでした。そしてそれが『一夜にして』『予告なしに』『今から外国通貨の交換レートは自然の成りゆきにまかせる』となりました。(外国投資のからんだいきさつがあって、そのほうが政府にとって有利とみたからです。)

外国通貨の価値はそれまで不当に低くおさえられてきたわけですから、今度はぎゃくに『ロシア通貨ルーブル』の値段は急降下です。どのくらいルーブルの価値が落ちたかというと、2001年現在で5分の1です。ほとんど一瞬にして「1ドル=80円」が「1ドル=400円」になったということです!

russia economicsガ〜ン。どういうことかというと、ふつうのひとは、『タンス預金』以外はルーブルで銀行にあずけてあるから、もう外国旅行なんて行けない。家のなかから外国産ブランディーなどの姿が消える。外資系の会社だっていままでとおなじ給料をあげるわけにはいかない。先進国とたいしてちがわない給料にあっという間に追いついたとおもっていた一般ロシア人の鼻っぱしらをくだく。

日常生活での支払いは『ルーブル』ですが、『ドルを元にしてすべての価格がはじきだされつつあった社会』では大きな混乱です。『ドル』を基準にして設定されていた商品の値段は、ドルの価値があがるのにともなって高くなっていきます。もっともいっぺんにドルの値段が5倍になったわけではありません。一年〜ぐらいの時間をかけてじょじょにです。

それにともなって、なけなしのルーブル預金の実質的な価値はどんどん下がっていきます。急いで預金していたルーブルを銀行から引き出してドルに替えようとふつうはおもいますよね。・・ところが、『預金凍結』がなされていて一定額以上のお金を引きおろすことはできないのです(これが行列の理由)。だまって、じぶんの預金が実質的に目減りしていくのを見守るしかないのです。

それまで、シーチキン缶Lサイズぐらいのイクラ缶は8ドルでした。千円ぐらいですから、日本人だったら「そんなもんか」ですませてしまうかもしれません。それが今は4分の1の2ドル。2ドルですよ、イクラ缶が!

それとは逆に、いままで安かったドイツ製ミューズリ(コーンフレークのようなもの)が高くなる。イクラ缶が2ドルでミューズリが4ドルです。ほんとうはロシアではこちらのほうが健全なのですが、あまり急激に変化すると頭がクラクラします。「えっ?イクラのほうがコンフレークより安いの・・?」

『予告なし』『一夜にして』・・これはロシア金融政策(?)の『歴史的得意ワザ』です。『今日から千円を一円とみなします!(つまりあなたの100万円 → 千円。でも商品の値段はおなじ♪)』へっちゃらです、こんなの。

こういうやり方をされて、ロシア国民は一生かかって貯めたお金を過去に何回かあっけなく失っています。子供を大学に行かせるためにためていたお金・・家が買えるはずだったお金・・。昨日まではマンションが買えたお金で、今日はパンしか買えなくなります。(かりに外国で働いてドルを稼いできたとしても、預金は自国通貨でしかできないので、銀行預金ならパーです。)

あまり頻繁にこういうことが起こるので、ロシア国民は銀行預金を信じなくなりました。ロシア語で『銀行』と『ビン』はほとんどおなじ単語なので、ロシア人は『ガラスのビン(=銀行)にお金をためる』と言って笑っています。

※  ファイル中の画像はオレーグ・ヤフニンの作品。

かんれんファイル

■ ロシア人の給料ってなんぼ?
■ ロシアの食素材:イクラ料理はこっちよ

(2001.09.26. 点検)(2002.08.25. 見直し)(2003.02.01. 画像入れ替え)

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