EKAKINOKI

パレルモの町になにも宣伝しない広告

展評訳: Exibart / Ugo Giuliani 2001.01.17.

Il genio di Palermoシチリア・パレルモの市街には、むこう2週間、うっとおしい政治のポスターや商品の宣伝とならんで奇抜な広告が張られる。「なにも宣伝しない広告」だ。張られるのは、「パレルモの天才」というコンペを勝ちとった、若い写真家・ビデオ制作者ドメニコ・マンガノの作品。

町なかの広告やポスターのかたわらに受賞作品を張るという企画は、「現代アートは、一般大衆とのコミュニケーションを、よりはかっていこうというプロセスそのものだ。」(マリオ・ペルニオーラ)という言葉を思い出させる。

「パレルモの天才」は、アートにたいするより深い理解と創造性にたいして与えられる賞で、毎夏、国際的な審査員を迎えておこなわれている。ドメニコ・マンガノの作品は、「<J>のすごい旅」というタイトルで、<J> はキリスト(Jesus)を暗示している。直接そういう表現をしなかったのは、おそらくよけいな中傷を受けるのを避けてのことだろう。広告をはじめとする、世の中の軽薄なこと、馬鹿げたことのなかに、あえておなじようなかっこうをした「つくりもの」を投じ、マジをきめこむ。

写真は、ぼかしがはいっていて、しかも人物は、背後から撮られている。モデルは、わたしたちのまわりにいるごくふつうのひとだとかんじさせる。しかし一方でこのイメージは、パレルモの家ならどこにでもみかけるキリストの、彩色された石膏像を思い起こさせる。つまり、パレルモの人間にとってはごく身近な存在で、慈悲さと気高さと、叙情感さえ引き起こす。

Il genio di Palermo写真の背景は、肉市場、小羊のぶるさがった肉屋、壁の落書き、ちいさな回教寺院の入口、商店の看板、町はずれのゲームセンター、宣伝用のポスター、海に注ぐ覆いのない下水道。ともすると、気にもかけないごくありふれた日常の風景に、純真なまなざしが向けられる。これが新鮮だ。

「パレルモの天才」創設者のエヴァ・ディ・ステファノが言うように、それは「関与しない者の眼」だ。ドメニコ・マンガノの作品を通してながれる共通のテーマが、この「アウトサイダーの視点」。

ドメニコ・マンガノのもうひとつの作品で、これが賞をとるかにおもえたぐらい審査員の評価が高かった「ミンモ」。精神を病んだドメニコの叔父ミンモの、貧しい界隈での日常生活を撮ったドキュメンタリー調のビデオ作品。ミンモもまたアウトサイダーだ。

たしかにこの社会に「いきている」。が、この社会と直接の関わりをもとうとはしない。もう一方で、この社会を観察しているばかりか、その「殺風景さ」に驚いているかのような表現をする。こうして彼等が垣間見ているもの、その姿勢が、ひとまとめになって、わたしたちにたぐいまれなポエムを提供している。

アメリカの詩人エルツァ・パウンドが、シチリアからの手紙にやはり<J>と書いてキリストを暗示していた。

(訳 2001.01.18.)

※ 「<J >のすごい旅」(〜2001年1月31日) Palermo, Via Paolo Giri ほかパレルモ市内の通り。

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