EKAKINOKI

18世紀ヴェネツィア風景画家ベロット展

ベルナルド・ベロット
Bernardo Bellotto 1722-80 Venezia-Warszawa

展評訳: Exibart / Alfredo Sigolo 2001.02.19.

Bellotto「ベルナルド・ベロット展」は、今期ヴェネツィアの代表的な展示会のひとつ。ドイツ、ポーランド、アメリカなど計10カ国から、50点の大作品が展示されている。ベロットは、1700年代のヴェネツィア風景画派を代表する作家のひとり。その一生は、ヴェネツィアだけにとどまらず、ヨーロッパじゅうの宮廷をめぐった。展示作品のうちの何点かは、ヴェネツィアのあとヒューストンに旅立ち、さらに別の30数点のベロット作品とともに、「Museum of Fine Arts」で夏まで展示される予定。

この展示会では、作品を年代順に展示。ベロットのアーティストとしての成長過程に焦点をあてる。また、ヴェネツィア風景画派にたいする、あらたな見直しの、いい機会ともなっている。ベロット作品は叙情性、内面性に満ち、当時の風景画派にあたらしい息吹きをあたえた。1800年代のリアリズム、はてはロマンチズムまでをもさきどりしている。

ベロットの目を通してキャンバスに再現された都市、建物、広場、田舎、人々は、貴族ばかりか庶民をも魅了した。なかでも華美な都市風景は圧巻。1700年代の貴族社会、平和な時代に、ヨーロッパじゅうの都市、田舎につぎつぎとつくられた建物、城、庭、7年間続いた戦争がもたらした破壊と廃虚を、みごとに証言している。

つい最近まで、ベルナルド・ベロットに関してはさだかでない部分があった。原因は、ベロットの叔父がさらに有名なカナレット(1697-1768)だったことにある。(ベロットは、カナレットの女兄弟の息子。)カナレットは、ベロットの叔父であるとともに先生でもあった。しかも、ベロットとカナレットの作品があまりに似ているとみられていた時期があった。作品ばかりにとどまらず、ベルナルド・ベロットという画家の存在そのものが疑問視されていたこともあった。今回こうしてベロット作品を前にし、カナレットとはちがう独自のスタイルをもった、ヴェネツィア風景画派としてのベロットの斬新さと発展をあらためて確認することができる。

Bellottoこの展示会はすばらしい演出をしている。個々の作品のいきすぎない程度の解説。申し分のない作品の保存状態。完璧なかたちでの照明。ベロット作品のもつ「ちから」と「表情」がじゅうにぶんに引き出され、繊細で洗練されたベロットの画風を十分に堪能できる。口喧しいひとでさえも、美術マーケットのやっかみなど忘れ、作品にえがかれた貴族たちといっしょに庭を散歩したくなるだろう。教会や建物のすばらしさにうっとりとし、ゆるやかな緑の丘をくだって、水車のえがかれた川のながれに身をゆだねたくなるだろう。

「カメラ・オスクーラ(これをつかって、立体的な風景が平面上でどういうふうに見えるか参考にした)」の利用から遠近法、正確なデッサン、色彩、ベロットは叔父カナレットからさまざまなテクニックを受け継いだ。そのおかげでベロットは、壁の割れ目やいびつさ、水面のさざ波をえがききり、また、えがく対象にボリューム感をあたえた。

網の目のようにえがかれる「線(ライン)」をつかい、建物のかたちをはっきりさせるために、定規をつかってニスを絵筆で塗り込む。ボリューム感をだすためのぼかし。これらは、ベロットがカナレットから引き継ぎ、発展させたものだ。デッサンの正確さ、奥行きのある空間はカナレットをうわまわっている。人物像はたんなる「お飾り」ではなくなっていて、これなどはカナレットにはみられない。

1700年代の衣装、生活、習慣、地形、ヨーロッパ諸都市の風景、教会や住居の建築様式、庭園などを検証する際に、ベロット作品はつねに引き合いにだされてきた。ベロットは当時の現実を、質量ともにいきいきとたくみに再現した。

測量学、幾何学をそのまま絵画に適応した場合、どうしてもピラミッド式の構図になってしまう。それを修正し、人間の視覚で見て不自然でない構図にしたのは、ひとえにベロットの才覚による。自然で洗練された画風。作品の依頼者も、またこういうものを求めていた。これを実現するために、ベロットは絵画の構成(コンポジション、えがく範囲の決定、遠近法)、光線のあてかた、風景のなかになにをかきこむかという選択に、独自の工夫を加える。北側から光線をあて、影の厚みや範囲を大幅に誇張、色調やもののボリュームを強調したのも、すべてこのためだ。遠近感を2倍にも3倍にも誇張し、人間の視覚にごく自然にうつるように、あえて幾何学的な事実を無視した。Bellotto

「円錐」のかたちを組み合わせて全体を構成すると、ある一定のリズム感がかもしだされる。作品の外側、横に配置された光源は、色調のコントラストと陰影の反復を呼び、風景に力強さと劇的効果を与える。こういった要素も、ベロット作品にはとり入れられている。

ドレスデン時代、作品の登場人物についても風景画派の慣習から抜け出そうとベロットはこころみていた。その人物が何者なのか、どこの国の人間か、どういう階級にくみするのか、人物の容姿・仕草から一目でわかるように描こうとした。

ベロットの絶頂期というのは、彼がウィーンに滞在していた頃だといえる。依頼主からは絶大の信頼を受け、繁栄を謳歌するウィーンを描くように注文を受けている。賢明で公明正大な皇子によって統治されたウィーンの華美を描くという自我礼讃の図だ。その一方で、忍び寄る戦争の予兆と、それによってもたらされる人々の苦痛を、ベロットはほかの作品で鮮明に表現している。

ワルシャワ時代の後半、最後の画風の転換をベロットはこころみた。よりひろがりのある光線をつかい、きわめて叙情的なモチーフによって、いままでにない自然さと穏やかさを実現した。とても残念なことに、この時期に描かれた作品は、臘(ロウ)をつかった適切さを欠く修復によって、本来のベロット作品がもっている色調コントラストを失い、作品はかがやきを失っている。

(訳 2001.03.15.)(2001.09.23. 点検)

※ ベルナルド・ベロット展 Museo Correr(Piazza San Marco, Venezia)〜2001.06.27.

ベロット作品
http://www.wga.hu/frames-e.html?/html/b/bello..

かんれんファイル

■ カナレットの風景画 x ヴェネツィアの水位

絵画 ロシア イタリア