EKAKINOKI

ベッリーニ展

ジョヴァンニ・ベッリーニ
Giovanni Bellini 1433?-1516?

展評訳: Exibart / Alfredo Sigolo 2000.11.09.

Giovanni Bellini1400年代後半から1500年代初頭、この時期の作品を通してベッリーニは評価されたと言っていい。デューラー(1471-1528)はベッリーニのことを「ナンバーワン」だと言っているが、じっさいのところベッリーニの「かぶ」があがったのは、ベッリーニが30代後半の1470年ころからその死にいたるまでで、若いころはあまりうだつがあがらなかった。

ベッリーニは、兄のジェンティーレ(1429-1507)とともに、父ヤコポ(1400-70)の工房で修行。(父ヤコポはピザネッロ(1395-1455)とともにジェンティーレ・ダ・ファブリアーノ(1360-1427)についていた。)ベッリーニもさいしょは後期ゴシック様式の伝統にしたがう。その後、義理の兄にあたるマンテーニャ(1431-1506)のグラフィカルな影響を受けているが、決定的とされるのが、1474年から1475年にかけてのアントネッロ・ダ・メッシーナ(1430-79)のヴェネツィア滞在だった。ベッリーニ、メッシーナともに40代前半。ベッリーニは、光線とそのグラデーションに丹心して全体の空間を創りあげ、より立体化した人物像をそこにかきこんでいくようになる。これはあきらかにメッシーナの影響。

15世紀から16世紀にかけての変わり目は、ますますすごい時代になっていく。ロット、ジョルジョーネ、ティツィアーノ、セバスティアーノ・ピオンボ、老パルマといったアーティストたちがでてきて、先輩格のベッリーニも影響されずにはいられなかった。たとえば色のつかい方がそうだ。綿密な下書きもあえて放棄する。束縛されるもののないアーティストは、技法上の革新にどんどん突き進んでいった。いっぽうでベッリーニは、ヴェネツィア絵画の伝統からおおきくはずれるようなことはあえてしなかった。たとえば絵画の主題。技法の改善といっても、宗教的なテーマから離れる必要はないと、ベッリーニは考えた。

宗教を主題にしてえがかれたベッリーニの作品は人間性にみちている。たとえばベッリーニがよくかいた「赤ん坊を抱く聖母」。描写の内容が聖書に忠実だとは言い切れないが、ベッリーニにはそれでよかった。彼にとって大切なのは、聖母が、そのまなざしをとおして語りかけていることであり、謹み深い愛情を通して感じられる、聖母のけがれなさなのだ。深い愛情のしぐさを通して、ものしずかに神秘を語りかけてくるのが、ベッリーニの作品だ。

Giovanni Belliniラウレンティウス・ヴァッラ(1407-57)という、ルネサンス初期の思想家がいる。「精神的なけだかさは、日常生活に反映されるべきだ。」といって、「こころの世界と実生活の一致」をとなえた、ルネサンスの底辺にある思想だ。1430年ごろのヴェネツィアではポピュラーな考え方だった。ベッリーニが、この思想の信奉者で、その関係のサークルに出入りしていたというのは、こうしたベッリーニの制作態度をみていると、あながち的外れの推測とはおもわれない。つまりベッリーニにとって、「こころの世界」を反映させるために、あえて現実の描写からはずれる必要性はなかった。神の御心は、「愛情」という、きわめて人間的なすがたをとおしてえがくことができるはずだったからだ。ベッリーニの作品には、風景のなかにも、建物にも、植物から動物にいたるまで、ありとあらゆるもののなかに、「神聖なるメッセージ」が込められている。

さて、ジョヴァンニ・ベッリーニの1400年代後半から1500年代初頭の作品が、最新科学技術をつかった15年間におよぶ修復作業を終え、はじめておひろめになっている。アカデミー・ギャラリーに20数点展示されているほか、ヴェネツィアの何ケ所かに、移動をきらう作品が同時に公開されている。(〜2000.01.28.)「アカデミー・ギャラリーの23番ホール」には、かかれた当初の色彩を取り戻したベッリーニの作品が展示されている。びっくりすることもすくなくない。

「ピエタ」(1505年 上掲画像)のマリアの衣装は、すばらしい青色、紫色だ。背景の風景は、緑色、白色、黄色に輝いている。なんべんもニスを重ねて、光りにみちみちた草原を描こうとベッリーニが苦心したのが分かる。これがわかるのも修復のおかげだ。サンタ・マリア・デイ・ミラコリ教会の「受胎告知」では、聖母マリアのまとった衣装がラピスラズリ(瑠璃)のように青く輝いていて、天使の衣にまで映っているようだ。「サン・ザッカーリア聖壇後背画」の白い大理石とモザイク調のじゅうたん。「サン・ジョッベ聖壇後背画」(1487年 下画像)では、格子状の天井の下にビザンチン様式の金色がかがやいている。

(訳 2000.12.16.)

ベッリーニのファイル

■ 1400年代ヴェネツィア大工房のあるじ
□ ベッリーニ展

ジョヴァンニ・ベッリーニ作品
http://www.wga.hu/frames-e.html?/html/b/bellin..

かんれんファイル

■ アントネッロ・ダ・メッシーナ
■ ジョルジョーネ
■ ティツィアーノ

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