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ロンドン市内でローマ時代の金貨発掘

評訳: The Art Newspaper / Cristina Ruiz

ancient roman22カラットのローマ時代の金貨が、最近ロンドン市内で発見され、現在ロンドン美術館で展示されている。ネロ(37-68年)からマルクス・アウレリウス(121-180年)にいたる皇帝が刻まれた43枚の金貨だ。ロンドン考古学サービス(MoLAS)の考古学者たちが、フェンチャーチ通りにある2世紀の邸宅跡で発見した。

ローマ時代の金貨発見につながった今回の調査は、遺蹟のある場所をオフィス街にかえようとしていた「ブリティッシュ・ランド・カンパニー」の依頼を受けて「MoLAS」チームがおこなったもの。ロンドンは、古代ローマの前哨基地であったロンディニウムがもとになって築かれた。それがあって、商業開発にあたっては、まず英国文化省のロンドン考古学諮問委員会か、または選挙区の土地開発局の許可を受けなければならない。もし開発予定地が、考古学上の価値にあたいするとみなされた場合、開発側は、考古学上の価値に匹敵する金額をおさめなければならない。考古学上の評価額査定は通常、政府が契約した民間考古学会社によってなされる。「MoLAS」は、そういった会社のひとつで、ヨーロッパでもっとも大きい。

この調査中に遺物なり遺蹟が見つかると、史跡保護のために、開発側は計画の見直しをもとめられる。大規模な発掘などが要求される場合がこれにあたる。民間所有地から発見された遺物が「1996財宝条例」に該当すると、公共の博物館は、これを市場価格で購入する権利を行使できる。今回発見されたローマ時代の金貨は、この条例にあてはまり財宝と定義され、「ブリティッシュ・ランド・カンパニー」は埋蔵物をロンドン博物館に預託することを承諾した。

今回の、ローマ時代の金貨のような華やかな発見というのは、そうそうはない。たいがいの発見物は「1996財宝条例」のさだめる財宝のカテゴリーにはあてはまらず、土地所有者に、博物館への預託義務はない。それにもかかわらず、1990年にさだめられた環境省のガイドラインにしたがって、博物館への預託が一般的におこなわれている。文化省ロンドン考古学諮問委員会のジェス・リーヴ氏によると、「私の知るかぎり例外なく、土地所有者は、経験豊かなエキスパートのいる該当の博物館に発見物を預託しています。」

この気前の良さがまた別の問題を生んでいる。ロンドン美術館・初期ロンドン史責任者のヘッドレイ・スエインに聞く。「土地の所有者が発見物を預託してくれるおかげで、わたくしたちは資料の研究ができ、またわたくしたちの国の歴史を、より正確に知ることができます。ただ、考古学に関する全体的な態勢がととのっていない。考古学資料の長期にわたる保管をどうするのかという項目が、政府のガイドラインにはないのです。考古学資料は日ごとに増える一方で、博物館にはそれを保管するスペースがない。」

1998年、スエイン氏は英国にある115の考古学博物館を例にとって、考古学資料用の保管スペースがどのくらいあるのかを調査してみた。その結果、全体の44パーセントにあたる77の博物館が、2,270立方メートルのスペースを考古学資料用にあてていた。(注:部屋の高さが仮に5メートルとすると、20 x 20 m ぐらいの広さとなります。)全体の25パーセントにあたる42の博物館が、3年以内に5,984立方メートルのスペースを確保する予定だった。

美術館に相当のスペースがないものだから、政府と契約している48におよぶ考古学関連会社は、8,453点にのぼる個人所有の考古学資料を、計13,193立方メートルの独自のスペースに保管している。スエイン氏によれば、ほとんどのこのようなケースでは、考古学資料はのぞましい状態で保管されていないという。しかも、これらの資料はむこう5年間に、博物館に移動することになる。

この保管の問題は、ことのほか深刻だ。スエイン氏が調査をおこなった時点で、全体の18パーセントにあたる30の博物館が、考古学資料を保管するかわりに預かり金を課していたか、そうすることを検討中だった。預かり金制度を採用しているほぼすべての博物館が、「英国歴史遺産(English Heritage)」で規定されている、一箱あたり13〜19ポンドという課金レートによっている。さらに、所有者についての明確なガイドラインがないことが、状況をより複雑にしている。法律的には、依然土地開発者側に所有権がある。

ロンドン博物館は、ロンドンの歴史にかんして、もっとも大規模な博物館だ。英国じゅうの考古学博物館のの18パーセントにあたる、保管スペースを有する。これは、12万箱の保管スペースがある計算になる。

「いったいこれら考古学資料をどこに保管するのか..。だれも管理するひとのいない倉庫にほっぽり込むわけにはいかないのです。」(ロンドン博物館・スエイン氏)ロンドン博物館は最近になって、宝くじファンドをつかって保管スペースを拡充している。キュレーター(学芸員)たちは、全国にある学校に考古学資料を分散し、ロンドンの歴史を語るちいさな博物館をつくることができないか検討している。

「政府は、考古学をどうしようとしているのか、慎重に考慮する必要があります。 保管のスペースがないのでは、土地開発者側に発掘物を預託してもらう意味さえなくなってしまいます。」 英国じゅうの博物館が、この問題に神経をとがらせている。

© The Art Newspaper


(2001.01.29. 訳)

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