EKAKINOKI

ロシア映画「シベリアの理髪師」

監督のニキータ・ミハルコフは、「アメリカっぽい映画をつくるヤツ」としてロシア人のなかには敬遠する人もいます。でも、ロシアのベルトルッチとも言えるような、国際的な映画人であるのは、だれも否定できないでしょう。

「シベリアの理髪師」は、1999年、第52回カンヌ映画祭の招待作品で、開幕作品として上映されました。ロシアでは「タイタニック」をうわまわるヒットを記録しています。ちなみにこの映画のなかには、ミハルコフ自身ばかりでなく、彼の娘達も登場しています。(2000年9月下旬より上映 有楽町スバル座他、全国ロードショウ)

舞台は、1800年代後半、ロシア革命真近の、政情穏やかならぬ帝政ロシア時代。町なかを馬車で行く将軍が爆弾テロにあうという場面からフィルムがはじまります。

Сибирский цирюльник

主人公の士官候補生トルストイは、ロシアを訪れていた金持ちアメリカ人女性と恋におち、かりそめの関係をもちます。大人の彼女は、それはそれとして、将軍の女になります。それは、純情なトルストイには堪えられない仕打ちでした。

士官候補生のみ(!)によるモーツァルトの『セビリアの理髪師』で、主役を演じていたトルストイは、そのさなかに舞台から跳び降り、観劇中だった将軍をムチで打ちのめします。

トルストイは捕らえられ、そして順当に、シベリア送り。足かせをはめられ、他の囚人たちとともに、サンクト・ペテルブルクの町なかをシベリアゆきの駅まで行進。そのことを聞きつけた親族や士官学校の級友たちが駅に駆け付けました。

駅は厳戒体制で、中には入れません。シベリア行きの汽車がホームを出はじめると、やっと警備が解かれ、級友たちが群集をおしわけてホームになだれこみました。

級友たちは必死で叫びます。「トルストーイ、トルストーイ!」窓もほとんどない護送列車は囚人でぎゅうぎゅうづめです。どこにトルストイがいるかなんてわかりません。

だれかが『セビリアの理髪師』のアリアを歌いはじめました。それを聞いたトルストイが、列車のなかで声を合わせます。級友たちと最後に演じるオペレッタ・・・

映画のシーンから・・・
http://www.marat-basharov.narod.ru/foto_3.html

ロシア人の反応はさまざまです。

軍人出身のある会社社長はこう言いました・・・「ロマンチックとか美しいとかはさておき、私に言えるのはひとつだけ・・・欧米人だったら考えられないかもしれない主人公の行為は、ロシア人にはごくふつうだということ。」

比較的若いひとたちには好評で、それ以上の年齢層のロシア人たちはかなりさめた目でこの映画を見ていたようです。恋愛のプロセスに説得力が欠けるとか言う意見もあります。それはそれとして、登場人物たちのひたむきな姿にはやはり胸を打たれるものがありました。

たぶん、、いっぺんそういうひたむきさを体験し、政治体制の崩壊とともにそれが音をたてて崩れ去ったのを見てきた40代以上の人たちと、ソ連崩壊後の不安定な社会で、夢中になれるナニカを求めている若いひとたちとの違いでしょうか?(だから士官に憧れるというハヤリの発想はもあまりにタンジュンですが。)

そのほかにも、ロシアを象徴するようなおもしろい場面がいくつもありました!禁酒していた将軍が、マダムの誘いに抗しきれず、ウォッカを飲み始めるシーン。その飲みっぷりと、あとですっ裸になって厳寒の氷上で懺悔するのとか。春を迎える民族祭日に、男どもが2列に勢ぞろいしてケンカをするのとか。ケンカはロシアの伝統なんだというのがよくわかりました〜。

(2001.09.26. 点検)(2002.04.30. 見直し)(2003.01.27. 見直し)

※ トルストイはシベリアで理髪師になったので、セビリアならぬ『シベリアの理髪師』です。

かんれんファイル

■ ミハルコフ、メモ

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