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"アララトの聖母"

"ARARAT" / 2002年 / カナダ / エドワード・サロヤン監督

アララトの聖母1900年代初頭、トルコ領内にいたアルメニア人が大虐殺された事件(=ジェノサイド)がありました。(トルコ政府はこの事実をいまも認めていません。)そのとき、100万人を越すと言われるアルメニア人が抹殺されました。『アララトの聖母』はこの『ジェノサイド』をテーマにした映画です。

『アララトの聖母』の『アララト山(現トルコ領)』は、ノアの方舟のはなしにもでてきますネ。旧約聖書の洪水伝説のなかで、ノアがたどり着いたのがほんとうにこのアララト山なのかは、クエスチョンマークです。しかしかつてのアルメニア人にとって、アララト山は国の象徴であり、心の支えであり、信仰の対象でもありました。『アララト=アルメニア』です。

難を逃れてアメリカに移住した画家アーシール・ゴーキー(Arshile Gorky 1904-48)が、母親(ジェノサイドで死亡)とじぶんを描いた『芸術家と母親』という作品をめぐって、映画のストーリーは展開していきます。たぶんゴーキーはこの絵を描きながら、故郷の教会にあった『聖母子像』をも思い浮かべていたでしょう。それで『アララトの聖母』、です。

アーシール・ゴーキーというのは、こんな絵を描いたひとです↓
http://artscenecal.com/ArticlesFile/Archive/Art.....

ところがこうして映画のなかでわざわざゴーキーを登場させたのに、ゴーキーへのつっ込みが表面的というか客寄せパンダていど。せっかくゴーキーをとりあげたのですから、あれもこれもと込みいったほかのストーリーは切り捨てて、もっとニンゲン、ゴーキーに肉迫してほしかった。

この映画の舞台となったのはトルコのヴァン村。これはヒラメキました!ヴァン村、と言えばヴァン猫・・左右の目に色がチガウとか、片目が青いとか、ヴァン湖で泳いでいるとか。アーシール・ゴーキーもまたこの村で生まれたのですね。

またいっぽうで、映画そのものから『ジェノサイド』のおぞましさが伝わってくるかというと、それほどでもありません。

むしろ・・俳優や監督といった、映画を制作しているひとたち、トルコ系やらアルメニア系カナダ人のあいだに、ジェノサイドという歴史的事実をめぐって、だんだんとイヤな雰囲気がただよったりする。こっちのほうが、より現実味に溢れていて、そこいらへんからこの歴史的事実が残した傷跡のナマナマしさが感じられたりしました。

映画としては、期待したほどではなかったなぁ。アルメニア・ジェノサイドにもゴーキーにもカンシンがあるので、ワクワクして観に行ったんだけど・・

(2003.10.23.)

※ 『アララトの聖母』は日比谷スカラ座で上映中(〜2003.10.31.)。

かんれんサイト

アララトの聖母(公式HP):アーシール・ゴーキーの『芸術家と母親』の作品画像も見られます。
http://www.gaga.ne.jp/ararat/

アルメニアかんれんファイル

■ アルメニア・ホロコースト
■ 異境のアルメニア人(本)
■ アララトの聖母(映画)
■ アルメニア人はハイソだった、、?
■ アーシール・ゴーキー

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