EKAKINOKI

モレッティ監督と "息子の部屋"

Nanni Moretti 1953-

ずいぶん前のことだけど、モレッティの映画をさいしょに見たときの印象は強烈だった。リアル。イタリア人のマジメさと、バカさかげんとなげやりな態度と・・・すべてがアドリブのように進行していく。ふだんのまんまだ。

モレッティは、映画のなかで実生活のともだちをつかったりする。それもまた、リアルさに一役かっている。「自然さとかそういう理由からじゃない。ただ、へんにがんばったりしないとこが、映画を撮影しているときのナーヴァスな状況には、かえってよかったりする。(モレッティ)」

モレッティ映画の主人公は、監督であるモレッティ本人がやっている。その主人公の性格、というか考え方がちょっとかわっていて、しかもたえずそのことでアタマがいっぱいってかんじ。ちょっとマニアック。でも、どういうふうにかわっているかを説明するのはカンタンじゃない。

そのズレの程度は、たとえば・・・不倫時代の純潔主義者、魔女に囲まれた純真な牧師、快楽主義者のあいだの生涯童貞主義者、、、ちょっと病的かもしれないけれど、考えさせられるところがあったりして、、

モレッティ映画の特徴は、このリアルさと、主人公のいっぷう変わった性格にある。ただし誇張はない。主人公の性格にしても、こんなやついるよなぁ・・ぐらいの、あくまで日常の一風景。むしろ、その変人ぶりは滑稽で、おおいに笑わせてくれる。

しかし、イタリア人の素っぴんを撮るということは、その輪の中にいるひとにとってはおもしろいけれど、その輪の中にいないひと、たとえばほかの国のひとたちがみたら、そんなにおもしろくないかもしれない。すくなくとも、イタリアでヒットしたからといって、すぐにアメリカや日本でやろうという映画ではない。

そのモレッティの映画を日本のテレビ(BS)でやるっていうからぶったまげた。うわ〜、、モレッティをやるようになったんだ〜。。それもごく最近の映画で、2001年の「息子の部屋(Stanza del figlio)」・・・もちろんみてない。でもべつだん、すごい期待をしたわけじゃない。

最近のモレッティは、ワケがわからない自慰的な映画を作っていた。見るにたえなくて、一度、途中で映画館をあとにしたこともある。「こどもが生まれてからなぜか仕事ができなくなった。この3年間に作ったのはこの映画(「息子の部屋」)だけ。」・・・モレッティ本人が言っている。

「息子の部屋」・・・・・主人公の精神分析医ジョヴァンニは、海難事故で息子を亡くす。そのあと冷静に仕事ができなくなったジョヴァンニは、もう仕事をつづける意志がないことを患者に告げた。この場面・・・すごく印象的というか、象徴的だった。

それは、、かんがえすぎかもしれないけれど・・・ほかのひとたちが考えているようなモレッティ像にじぶん自身を合わせるのはもうヤメ!という、モレッティの映画作りにたいする宣言のようにもきこえた。

だからか、今回の作品は、だれがみてもわかりやすい出来だった。この作品は、2001年カンヌ映画祭でパルム・ドールをとっているから、客観的にみたら、それ以上の評価をすべきなのかもしれない。

ただそのぶん、絶頂期の毒々しいトゲと笑いはなかった。でも、作品らしい作品がでてきたのだからこれからに期待できるよ。「ナンニ・モレッティが帰ってきた〜!」みたいに紹介しているイタリアのウェブ・サイトもあった。モレッティはそれだけイタリアで期待されている監督のひとりだ。

なんで、「息子の部屋」というタイトルなの?「この映画のなかで息子の部屋というのは、どうにも開ける勇気がわかない、なかに入っていくのがむずかしい場所、なのです。(モレッティ)」 なんか、暗示的〜。

息子が死んで、主人公ジョヴァンニも妻も娘も、なんだかよくわからない日々をすごしていたある日、その存在さえ知らなかった息子のガールフレンドが尋ねてくる。それも、ボーイフレンドとヒッチハイクでフランスに行く途中だった。ジョヴァンニは、ヒッチハイクがしやすい場所までかれらを車で送ってあげることにする。そして、かれらが眠り込んでしまったので、とうとうフランス国境まで送ってしまった。

モレッティ自身はこの映画で、「苦痛はひとを結束させるよりバラバラにする」みたなことをいいたかったと言う。フニャフニャフニャ・・・・いずれにしても、、モレッティ作品はいつも思考がゴチャゴチャと錯綜していて、明瞭ななにかのメッセージをもっている、というのとはチガウ。そのゴチャゴチャぜんたいが、モレッティ映画なのだとおもう。

「息子の部屋」を見たあとのかんじは、すがすがしかった。ナゼ?、、、わからない。でも、、息子のガールフレンドのボーイフレンドなんて、ほんとは見たくはないはず。そのかれらを、わざわざフランス国境まで送りとどけた。息子を失った父親は、苦痛のうちにも、「人生はつづいていく」というジジツを受け入れた、、、たぶん、そんなふうに感じたんじゃないかとおもう。

(2004.11.30.)

※ 文中引用は・・・La Repubblica 2001.03.07.

かんれんサイト

セリフと写真。よくできてる。 イタリア語だけど。
http://nannimoretti.altervista.org/

モレッティ映画のフォト・ギャラリー(ファンの・・)
http://ec.eurecom.fr/~giorcell/Nanni/galleria.html

作品について、モレッティ自身の感想。(英語)
http://www.filmlinc.com/fcm/1-2-2002/moretti2.htm
(Film Comment Magazine)

モレッティ監督作品

1973 LA SCONFITTA / PATE DE BOURGEOIS 1974 COME PARLI FRATE?  1976 IO SONO UN AUTARCHICO 1978 ECCE BOMBO 1981 SOGNI D'ORO (ヴェネチア映画祭特別金獅子賞) 1984 BIANCA 1985 LA MESSA E FINITA 1986 (ベルリン映画祭銀熊賞) 1989 PALOMBELLA ROSSA 1990 LA COSA 1991 Il portaborse 1993 CARO DIARIO 1994 L'unico paese al mondo 1996 La sera della prima di Close Up 1998 Aprile 2001 La stanza del Figlio (カンヌ映画祭パルム・ドール/監督賞)

日本語検索すると・・・・・ 「青春のくずや〜おはらい(1978)」 「監督ミケーレの黄金の夢(1981)」 「僕のビアンカ(1984)」 「ジュリオの当惑(1985)」 「赤いシュート(1989)」 「親愛なる日記(1993)」 「息子の部屋(2001)」

・・・・・ 日本で公開されたってこと?ビデオがあるってこと?モレッティ作品みたことがないひとがじゃみてみようか、なら、、やっぱ、80年代の作品「ソンニ・ドーロ(黄金の夢)」「ビアンカ」「ラ・メッサ・エ・フィニータ(これにてミサはおしまい→ジュリオの当惑?)」、、あたりが、モレッティの真骨頂だとおもいまーす!

絵画 ロシア イタリア