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ペール・ラーゲルクヴィスト

Par Lagerkvist 1851-1974 スウェーデン

ラーゲルクヴィストはスウェーデンの文学者(1951年ノーベル文学賞)。ラーゲルクヴィストの作品を読むのは、たぶん、はじめて。「おもしろかった?」ときかれると、、正直なところまだなんと答えてよいのかわかんない。

でもね、なんなんだろうなんなんだろう、、とおもいながらけっきょく3作品 − 「バラバ」「巫女」「刑吏」 − 読んじゃったんだよね。だからどこか惹かれるところがあるんだとおもう。

「バラバ」はイエスのかわりに放免された男のそののち、「巫女」は神がかりのお告げをやってた女が男に恋してこどもをみごもったはなし、「刑吏」は死刑執行人の立場から・・・いずれの作品も、「イエス・キリスト」に、「神」に、迫る。

周辺人物をえがくことで「イエス・キリストってほんまはなんなんや」に迫るやりかたとか、状況をぐっとじぶんの時代に引き寄せて理解するみたいなとことか、どことなく、カラヴァッジョの絵を連想させたりする。もっともラーゲルクヴィストは、美術のもっとべつのことに惹かれてたみたい。

(以下引用はすべて:「主婦の友社・ノーベル賞文学全集」エリク・ヤルマール・リンデル筆解説より)

パリへの旅は・・・・・この若い学生(ラーゲルクヴィスト)は直ちに当時の美術−1913年代の絵画−と実り多い接触をもつことになった。・・・・・咲き出たばかりのピカソのキュービズムは、彼にとって大きな事件であった。

(引用おわり)

へへぇ〜、、ってことは・・・それまでの時代にはかんがえられなかったような新しい社会の現実、ガチョンガチョンにゆがんだ近代社会、その多層に入りくんだ価値観を、ピカソやブラックらが絵に描いたようにラーゲルクヴィストも見てたってことだな。

(以下引用)

スウェーデンに帰って来ると・・・・・当代文学の飼い馴らされたリアリズムと、彫刻が表現しまたは再建しようとしている大胆な、強く様式化された現実とを比較している。

(引用おわり)

ここで彫刻というのは、アフリカ彫刻とかに影響を受けた、当時の彫刻様式の変容ぶりのことだとおもう。あえてそうした彫刻界のうごきに言及し、旧態依然としたリアリズム文学と対比してるってのは、、、

じゃあなに??モディリアーニやジャコメッティなんかもアフリカ彫刻から直に影響を受けているけど、、ラーゲルクヴィストはもしかして、文学界のモディリアーニ?

(以下引用)

ヨーロッパの現代文明が大部分の時代に表わし得なかった『真実』に対するより深い情感のシンボルとして、原始芸術に走った。民衆の間に伝わった古代からの宗教の書、旧約聖書、リグ・ヴェーダの賛歌、コーラン・・・・・

(引用おわり)

う〜ん、、じっさいにのめり込んだのは超々古典の世界かぁ。。サガ(アイスランド叙事詩)とかカレワラ(フィンランド叙事詩)とかにもふれてる。ハハ、、モディリアーニの線はないかぁ、、

なら、ラーゲルクヴィストが「彫刻の再建」を指摘したのは・・・そのスピリットに承服しました、でもそれをどうやって表現するかはボクなりに、ってことだね、きっと。まあ、美術と文学はそう単純比較できるもんじゃないし、、

(以下引用)

我々の時代は、平衡の欠如と雑種性によって、いびつな、空想的なものとなっている。それは自然主義が表現しえたものよりも更に空想的である。我々は人間の生活が我々に背負わせる苦悩に対して、表現を与えてやらなければならない。

(引用おわり)

古典的なおおらかさみたいの、ラーゲルクヴィストの表現にはあるかもしれない。あるいはシェンキェヴィチの「クォ・ヴァディス」やショーロホフの「静かなドン」なんかをおもい起こしたりもする。

けど、ラーゲルクヴィストの文学はひとつの作品で完成しているというよりは、むしろすべての作品を束にしてラーゲルクヴィストという一大叙事詩がなりたってるんじゃないかなぁ、、、

だからだから、、!たとえばネ、「バラバ」と「巫女」と「刑吏」をまとめてめんどうみちゃってさ、3部構成みたくなるけど、「ジーザス・クリスト」という一本の映画にしたらどう?すごくいいとおもうけど、、!?サブタイトルは「運命の先にあるもの」でどう?!

ナゼっていうと、、「気にすればキリがないし・・・ガンガンとふんづけていくしかないんだよ。」みたいな・・・ラーゲルクヴィストが書いてることって、そんなふうにもとれるんだ。。ちょっとそれじゃ、かっこつけすぎ?精神論っぽい?

(2004.10.05.)

※ バラバ(1950年)/岩波現代叢書(1953年初版) 「巫女(1956年)」/岩波文庫(2002年初版) 「刑吏(1933年)」/主婦の友社・ノーベル賞文学全集(昭和46年初版)

※ シェンキェヴィチ(1846-1916)はポーランドの作家。ショーロホフ(1905-84)はソ連の作家。

※ おなじく北欧を代表する作家、イプセン(Henrik Johan Ibsen 1828-1906/ノルウェー)やストリンドベリ(August Strindberg 1849-1912/スウェーデン)を、ラーゲルクヴィストはあんまり評価してなかったみたい。かれらについてこんなことを言ってる。・・・・・象徴主義の必要性は認めていたけれど、自然主義的な物の見方を捨てていなかった。

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