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『ハドリアヌス帝回想録』

Marguerite Yourcenar, 1903-87

病をわずらい、死を予感したハドリアヌス帝が、こんな述懐をしています。

Hadrianus (Hadrian Adriano), AD.76-138 Baia(Bacoli):

まだなすべきことは山積みしている。・・・・・ボリステネス村の百姓たちは、厳冬のあと、援助を求める権利がある。それとは逆に、いつも皇帝の心づかいを利用しようとしているナイルの谷の裕福な耕作民には援助金を拒否しなければならぬ。学術長官ユリウス・ウェスティヌスは公立の文法学校の開設について報告書を送ってよこしている。

わたしはパルミラの商業法規の改訂を終えたばかりだが、淫売婦の価格から隊商の入国税にいたるまで・・・・・軍人の植民地では重婚の例がふえているが、わたしは帰休兵たちに結婚を許す新しい法律を誤用しないように、・・・・・古代カルタゴ領のある地域で、いまなお子供の人身御供が行われているが、バールの祭司たちに、生贄の薪の火をかきたてる喜びを禁じる方法を考えねばならない。

村長さんみたいやんか・・・!ハハ

Tivoliにあるハドリアヌスのヴィッラ模型。ディズニーランドみたい!ハドリアヌス帝は、ローマ帝国5賢帝のひとりです。領土はイギリスにまで広がり、世界遺産の長城は彼の時代のものです。


皇帝がじぶんの一生を回想するのが『回想録』ですが、『ハドリアヌス帝回想録』を書いたのは、現代フランスの作家マルグリット・ユルスナールです。

ハドリアヌス帝の回想

マルグリット・ユルスナール著「ハドリアヌス帝の回想 (多田智満子訳/白水社/2001年)」: Memoires d'Hadrien: Marguerite Yourcenar 1958, Librairie Plon

と言っても、ユルスナールは中途半端じゃありません。ハドリアヌス帝が読んだとおもわれる本にことごとく精通するなど、一生をかけてハドリアヌス帝を追体験しています。

つまり、「ハドリアヌスになりきっている人」です。

ユルスナールはあとがきでこう述べています。「19世紀の考古学者が外側からやったことを、内側からやり直すこと。」

この小説の構想を、ユルスナールは断念したり再度着手したり、ほとんど一生をかけてあたため続け、準備し、そして完成させました。

(2003.11.10)

ハドリアヌス帝かんれんファイル

■ 『ハドリアヌス帝回想録』
■ 版画に見るかつてのハドリアヌス帝ヴィッラ
■ ハドリアヌス帝ヴィッラ訪問記(訳)

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