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「〜近郊生まれ」って、どの程度「近郊」なの?

ジョットの例

Giottoジョット(Giotto di Bondone 1267-1337)はフィレンツェ郊外ヴェスピニャーノというところで生まれています。現在の地名はヴィッキオ(Vicchio)、カステッロ・ディ・ヴェスピニャーノ(Castello di Vespignano)という地域にあり、「ジョット生誕の家」とかもあって博物館になっています。「生誕の家」たって、、、たぶん、シンボル的な博物館・・?

美術史家ヴァザーリ(1511-74)によると、「初期ルネサンスの巨匠チマブーエ(1240/50-1302/03)が、羊飼いをしていた絵がうまい少年ジョットを拾い受けた。」ということになっています。ヴァザーリ先生はそういうストーリー仕立てがお好みだったというのはべつにしても、当時はそういうの、それほどめずらしくもなかったんじゃないかな。

ところで美術史をめくっていると、生誕地によく「フィレンツェ近郊」とか「〜近郊」という表記をみかけます。「〜近郊」と書いてあると、昔のことだからとんでもなく遠いとこだったんじゃないか・・なんておもってしまうのですが、また別のひとは、今だとちょっとバスに乗れば着くぐらい、にしか気にかけないかもしれません。

それで「〜近郊」というのは、ホントはどのくらいのところだったのか、ちょっとかんがえてみることにしました。(以下、距離や車での所要時間は現代の道路状態によるものです。)

Giottoジョットが生まれたヴィッキオ(ヴェスピニャーノ)は、 フィレンツェから34キロですから、車で40分ぐらいです。昔のひとは歩くのも速かったでしょうから、かりに1時間に6キロぐらい歩いたとして、5〜6時間。女子供なら、、それでも8時間ぐらい?やっぱ遠いか・・・。なにか目的がなければわざわざ歩こうなんておもわない距離ですね。

ところで、ヴィッキオはまだフィレンツェ国内にあります。ではお互いに張り合っていたシエナやアレッツォなどべつの国はフィレンツェからどのくらい離れていたかというと、シエナはフィレンツェから70キロ、アレッツォは80キロ。ともに車で1時間20分ぐらいです。

ヴィッキオからフィレンツェに行くのにくらべると2倍ぐらいかかりますね。う〜ん、、70〜80キロぐらい離れたところにべつの国の首都があったとすると、、ジョットが生まれたヴィッキオなどはもう国はずれ、と言えますね。

ポントルモ(1494-1557)はどうでしょう?フィレンツェ近郊ポントルメ村生まれ。ポントルメは現在のエンポリ近くで、フィレンツェからもシエナからもだいたい30キロぐらいのところです。レオナルド・ダ・ヴィンチ(1452-1519)が生まれたヴィンチ村は、フィレンツェから40キロ。

Giotto知り合いに、第二次大戦前のアレッツォで生まれ育ったひとがいて、フィレンツェにはじめて行ったのはかなり大きくなってからだったんだそうです。

「でどうだったの?」と聞くと、「べつに。」「えっ〜〜!フィレンツェだよ、、フィレンツェ。。」「う〜ん、フィレンツェといってもねぇ、、ほとんどアレッツォとおんなじだよ。ちょっとばかしスケールが大きいだけで、、フィレンツェにあるものはみんなアレッツォにあるもん。兵役ではじめて行ったミラノのほうがずっと強烈だったなぁ。」

「歩きなさい」と言われて「それなら歩ってみるか」という気になれるのは、せいぜい15キロぐらいではないでしょうか?車がそんなに発達していなかったころの日本人は、そのぐらいの距離は歩いていたなんてはなしもよく聞きます。だけどせいぜいそのぐらいまでで、それ以上となるとよっぽどたのしいコトでもないかぎり、ちょっとねぇ・・・

ロバとか、乗り合い馬車とかはあったかもしれません。。でもいまほど情報がなかった時代ですから、物理的な距離よりも心理的な距離のほうがきっとあったとおもう。情報がないということは、ほかの土地に行くという欲求もあまりなかったとおもうし・・・。そうすると、「〜近郊出身」というのはやはりかなり遠い世界だった、、ってことになるかな・・・・・

(2001.06.21.) (2004.03.23. 見直し)

※ ファイル中の画像:パドヴァにあるスクロヴェーニ礼拝堂のフレスコ画は、銀行家エンリーコ・スクロヴェーニがこの世の免罪のためにジョットに注文したもので、ジョットの傑作のひとつとされています。上から画像ふたつがスクロヴェーニ礼拝堂内部で、3番目はそこにかかれた「ユダの接吻」部分。ジョットはこのフレスコ画を制作するのに、ダンテ(1265-1321)の「神曲」にモチーフを得たそうです。

ジョットかんれんファイル

■ 現代アートと古典のちがい:ジョットの例
■ サンタ・クローチェ教会(フィレンツェ)のジョット(Photos)
■ 〜近郊生まれってどういうイミ?(ジョットの例)
■ ジョットとドゥッチョのながれ

かんれんサイト

■ ジョット生誕の家(家の写真が見られます)

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