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リッチ/オバケだぞーの写真

もうひとつ目を引いたステファニア・リッチの作品は、布で覆い尽くした被写体を撮ったものだ。部屋のなかのテーブルと椅子。人間、おもちゃ、ネコ。「オバケみたいでイヤ。」とか言うひともいる。そう言われてみると、たしかにこどもの頃そんなことをしたのを思い出す。

Stefania Ricci

「マッチラケの写真」というファイルで紹介したリッチの作品は、視界から隠れているものを目に見えるようにするたぐいのものだった。ここでは、目に見えているものをわざわざ布で覆ってしまおうという。リッチはなにをかんがえているのだろう?リッチのはしり書きから引用してみる。

<身のまわりを取り巻いているモノがじぶん自身に与えている影響の大きさに気付けば気付くほど、慣れ親しんだ家からしばし離れてべつの環境に身を置きたいとおもう。でもいつかここに帰ってきて、家族は年をとり、部屋はホコリだらけになり、あるものは壊れて別のものと置き替えられ、なにもかもが変わってしまっているのかとおもうと胸が痛む。だから今のままでいられるようにと布で覆った。>

リッチの作品は写真というかたちをとっているが、ほとんどはシャッターを押す前の、言ってみれば「インスタレーション」の作業による。インスタレーションというのは、たとえば現実のある状況に手を加えて、そこになにかべつの感覚なり意味をもたせるアートの比較的新しい表現方法だ。

シャッターを切る前に、被写体を再構成するのがわたしの作品の主要な部分です。でも、作品の制作が終わった段階で被写体ではなくなったモノが本来の姿に戻れるような範囲内でです。・・・・・家のなかにはふだん見向きもされないようなものがたくさんあります。あるものは外見的にも醜かったりとるに足らないものだったりですが、そういうものでもひとつのストーリーをもっています。

わたしがするのは、そういうものにふさわしい環境を与えること。そういうものに、より自然らしさを加えることです。それが日常用品であれば、それを引き立たせるものはやはり日常使うもので。ぬいぐるみには変化をしていく自由を与えたい。

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Stefania Ricci

ふたつのリッチのファイルで紹介しているそれぞれの作品は、一見べつのテーマをあつかっているかのように見える。でも、そこには共通しているなにかがあるはずだ。一貫してリッチが問題としているのはなんだろう?

ふだんは見過ごしている身のまわりのささいなものからもわたしたちは影響を受けている。そういうものを視覚的な世界に引っぱりだすこと?では、一方でそういうものを布で覆ってしまうというのはどういうことだろう?はっきりとはまだ分からない。しかし、その結果でてきた作品の表情には共感できる。そして興味をおぼえる。

アーティストは、じぶんが対象としているもののなにをどう変えればより納得のいくかたちになるのかを直感的に理解する。そしてそれを作品としてかたちにしていく。相手にしている対象が日常的なものだろうが社会的なものだろうが、それは基本的には重要でない。入り口は千差万別でも、目に見えない感情がその底辺に共通して流れている。アーティストが問題としているのも本来はそこのところだ。

この感情のながれを把握し、じぶんの感覚との差異を鋭く感じとり、作品としておもうようなかたちに作りあげることができればそれでいい。そのプロセスを言葉で説明するというのは、またもうひとつべつのことだ。それに、アーティスト自身がじぶんの作品を、言葉で、どれだけうまく説明できるかというのもまた疑問。(どれだけ深く説明できるかということだけど。)

このことは、作品に触れるわたしたちにとっても同様に言える。「いいな」とおもった瞬間に、その作品を制作したアーティストと感覚を共有する。そしてその「いいな」が重なると、こんどはまったく別の現実に対してもおなじような「いいな」を、こんどは積極的に求めるようになる。アーティストが作品を作るのとおなじプロセスを、わたしたちはたどりはじめる。

これからさらに感覚を研ぎすませてリッチは作品を発表していくだろう。それを見ていくうちに、リッチがとらえている「意味」みたいなものがだんだんとおぼろげながら伝わってくるんじゃないだろうか。それを、たのしみにとっておきたい。

Stefania Ricciのサイト
http://www.stefaniaricci.com/

ステファニア・リッチのファイル

■ マッチラケの写真
□ オバケだぞー
■ 自然がテーマのリッチの作品 (2002.09)
■ 自然がテーマのリッチの作品 (2002.09)(部分)
■ リッチのしゃれたクリスマス (2002.12)

(2002.04.11.)(2002.09.06. 画像追加)

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