EKAKINOKI

外国語のカタカナ表記

Domenico Ghirlandaio『外国語の名称にはできるだけ原語にもとづいた表記』というのが日本での習慣です。これはとてもいいこと。『MICHELANGERO(1475-1564)ミケランジェロ』のことを『マイケルアンジェロ』と、英語圏の一般のひとは言います。これじゃあまるで『マイケルジャクソン』・・でもまだ分かる・・。

『シーザー』というローマ時代の英雄のことを、日本では『カエサル(CAESAR)』とラテン語読みで教えます。シーザーはローマ時代に生きていたのですから、これでいいのです。ところが本国イタリアでは『チェーザレ(CESARE)』と、現代イタリア語に置き換えられます。イタリア語に不馴れだと、だれのことか分からない。「このひとシーザーのことも知らないの?!」とかになってしまう。

しかし、ここにも問題が生じます。そもそもがちがう言語なのですから、日本語にはない発音があって、『正確』にといっても限界があります。

たとえば、イタリア語で『RR』とか『TT』のように子音がふたつつづく場合。日本語で正確に表記すると『ッ』となります。『RAFFAELLO(1483-1520)』は日本では一般的に『ラファエロ』ですが、正確には『ラッファエッロ』。それでは日本人にはしっくりとこないから、せめて『ラファエッロ』としたいところ。でも『ラファエロ』がもう流布しているから、イタリア語をはなすひとは無念でも『ラファエロ』と書くしかない。『BOTTICELLI(1445-1510)』にしても『ボッティチェッリ』で、『ボッチチェリ』ではないのです。

『CARLO CARRA(1881-1966)』というイタリア人画家がいます。『RR』なので、『カッラー』。ほんとは『カッラッー』とでも表現したいところ。でも日本語としてはなんだかヘンだし、アクセント(強調して発音する部分)の置き場所によっては百通りに発音しそう。よくあるカタカナ表記は『カルラ』。

なぜ『カルラ』になるのかというと、日本語とイタリア語の発音を比較して、こういう場合はこういうカタカナ表記にするという一応のとりきめがあるからです。これで統一すれば、カタカナ表記をみて原語がどういう表記なのかだいたい分かります。(その国の言葉を理解している場合。)

これは、ある意味ではカタカナ表記の交通整理になっているし、ひとつの賢い解決策です。しかし発音という観点からは、遠のいてしまう。イタリア語を知らない日本人が、『カルラ』とおしゃべりするよりは『カッラー』と言ったほうが通じるからです。

野菜スープのことをロシア語で『シー』と言います。これも日本語にはない発音で、ほんとうは『シシシー』。これが、従来のカタカナ表記法では『シチー』となります。でも『シチー』といったってロシア人には通じない。まだ『シー』か、『シシシー』とおどけて言ったほうが、スープにありつけます。

Carlo Carraつまり問題は、『従来のやり方によるカタカナ表記の統一』なのか、『原語の発音により近いカタカナ表記』なのか、ということです。

『カタカナ表記法の統一』というのは、のぞまれるところです。辞典を調べても、書いているひとがどういう基準にそって名称のカタカナ表記をしているのか、戸惑うこともすくなくありません。それで見つからないと、「もしかしてレオナルド・ダ・ヴィンチはこの世に存在しなかったのではないか!」などとヤケクソになってしまいます。

もう日本語として定着してしまっっているものを、いまさらかえてもしようがない。『ミラーノ』が『ミラノ』で、『タルストイ』が『トルストイ』でも、もうこれはいい。でも、『カタカナ表記法の統一』がないと、これからますます混乱する(とくに検索するときなど・・)。

こういうのは、ひとりでムキになってやってもしようがない。そこで、「今日から、ジとディは区別します。」とか・・「ヴィのかわりにビなんて書いたらアウト。」とか、文部省がアウトラインを取り仕切ってくれないと・・おさまりそうにない。

頻繁に日本語に登場する外国語の『カタカナ表記法』を、ここらで統一することを考えてもいいんじゃない・・?そして、その施行を徹底させる。ついでに、『R』を『L』から区別するための『ラリルレロ』も一行新たにつくってほしい。どうせつくるなら『カワユイ』のをつくってほしい。そのぐらいの注意をもって日本語のなかの外国語に接してもいい時代だとおもいます。

さまざまな外国語をハイレベルで話す日本人が巷にはたくさんいて、外国語がアカデミズムの牙城のなかだけのものではなくなったいま、原語を知らないひとでも、外国でおしゃべりしたときに通じるようなカタカナ表記法のほうがいいっ!こういう時代に、『ラッファエッロ』を『ラファエロ』と書くのは、『ストレス』以外のなにものでもありません、とおもうのですが、どうでしょう・・?

ストレスをなくすもうひとつの解決策には、日本語としてなじみのない『ディ』とか『ヴィ』などのカタカナ表記はいっさいやめる、というのもかんがえられます。それならそれでおもいきって『チントレット』『ボッチチェリ』『ピエロ・ヂ・コジモ』と書けばいい。個人的にはこれも賛成〜!

かんれんファイル

■ ロシア人名の表記法
■ イタリア人名の表記法

(2001.10.18.)(2002.08.10. 見直し)

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